2011年04月14日
赤峰勝人さん 信濃毎日新聞 山ろく清談より
作物は土と水と光で育ち、食べる人の命をつないでくれます。人が食べた物は堆肥となり、虫や微生物が再び土に返す。植物の中を通過した水は蒸散し、やがては雨となり、作物をそだてます。ところが文明の名の下、
人の生活はこの生活はこの循環から外れてしまっています。
人は農薬や化学肥料、食品添加物合成甘味料といった化学合成物質を体内にため込んでいます。がんやアトピー性皮膚炎の人が増え、生活習慣病の低年齢化が進み、心はもろくなりました。精子数の減少傾向をみても、命が失われつつあることがわかります。
改善するには、農薬と化学肥料を断ち、玄米や旬の野菜といった自然のエネルギーいっぱいの物を食べるしかないと確信しました。
化学肥料で土の栄養分を理想の値にすれば農薬は必要ないことを学び、化学肥料を使った無農薬栽培を始めたのは1970年でした。良い野菜を作りたい一心でしたが、なかなかうまくいきません。
そんな時、草を2年間野積みした堆肥だけで育てたピーマンが、立派に実を付けました。土の栄養分が理想の値を示し、
化学肥料はいらないと土が教えてくれたのです。
野心がありましてね。無農薬で一旗揚げようと知人と野菜の共同経営を始めたのです。だが3年で失敗し、多額の借金を抱えました。そのころ読んだのが、公害問題を扱った作家有吉左和子さんの「複合汚染」です。化学肥料も毒であることを知り、それからは断ち切らなくてはと実感しました。
その後も失敗続きでした。ニンジンは毎年、ビシッ、ビシッと音を立てて割れてしまう。だが、畑の一部で野草のスギナが群生したため、放置していた場所では割れずに育った。スギナが土に返り、土中のカルシウム分を補ったのです。
人が嫌う菌も死んだ野菜の葉を土に返してくれる。毒を含む野菜を選んで食べ、人の口の中に入らないように守ってくれる虫もいる。こうした自然の力を知り、82年にようやく無農薬・無化学肥料の「循環農法」で完成したニンジンを見た時、嬉しくて何時間も涙を流しました。
消費者の皆さんに声を出してほしい。「農薬や化学肥料を使った作物はいらない」と言えば、農家は応じるしかありません。箱の中でもいい。土をつくり、種をまいてください。ごみや残飯を肥料に自分で野菜を育てるのです。マンションでもどこでも、土に触れることはできます。体と心が元気になり、野菜のおいしさも分かるはずです。
循環の大切さを人々に訴え始めた20年ほど前は「農薬や化学肥料なしに何ができるか」「頭がおかしいと思われるぞ」といわれました。でも今は、耳を傾けてくれる人が増えてきました。地球の環境はなお危機的状況だと感じています。畑から教わったことを、
これからも多くの人に伝えたいと思います。
Posted by HAPPY BIRTH CAFE at 09:15│Comments(0)
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